高校生の頃好きだった先輩のこと

 

好きな人がいない毎日で思い出されるのはいつも彼のことだ。今となっては彼への想いというよりも、彼を好きだった私とか、告白していたらどうなっていたかなとか、そういう変な執着だと思う。

 

この世には恋愛体質の人とそうでない人がいるけれど、私は完全に前者だ。

浮かれることよりもしっかり両足つけて生活するのが好きだし、人に執着があまりなく、勤勉な努力家タイプでもないため、片思いに盲目になることなんてほとんどない。

 

そんな私が人生で一番好きだったと言えるのは、高校生の頃にバイト先で出会った先輩だった。

 

先輩は、家庭教師やインターンなら時給2000円で働けるような超名門大学に通っていたのに、なぜかチェーンの飲食店でバイトをしていて、そのおかげでたまたま出会うことができた。

先輩は飾り気がない人だった。いつも理路整然としていて、あたふたしてるところなんて見るどころか想像もつかない。お笑いや冗談が好きで、でも変なところで世間知らずだった。バイト中に先輩が休憩に行った時のこと、先輩がいるはずの事務所が真っ暗で、覗いてみると先輩は暗闇の中で腕を組んで机に座っていた。休憩終わりに聞くと「考え事してただけだから電気代もったいないと思って」と言っていた。今思えばかなり変な人だったのかもしれない。

 

私は彼に優しくされたわけでも脈アリを匂わされたわけでもなく、ただ自分から惹かれていった。恋愛感情と憧れの感情が同じくらいの比率で、付き合いたいなんてことは全然思ってなかった。ただ、髪型を褒められた時は嬉しくて、友達に不評でも続けてたし、先輩が他の女の子と話してる時はちゃんと落ち込んだ。結局先輩がゲームの会社でインターンを始めるために先にバイトを辞めてしまい、諦め切れずにLINEを教えてもらったのだけれど、遊びに誘うことも告白もせずに終わった。ただ2人で話せただけで幸せだったから、あまり後悔もしなかった。

 

さて、今の問題は、この先輩への恋愛感情が私の恋愛感情の基準になってしまっていることだ。

ここ数年、新たな心踊る恋愛を探し歩いているのだけれど、一向に準備運動のままで数年が過ぎた。

何人かお付き合いやら何やらをしたのだが、振り返ってみてもぴかりと光る恋愛はなく、この先輩への片想いの時期の眩しさに全部逆光になってしまっているのだ。

 

高校生の私を越える熱量を引き出してくれる殿方は今後現れるのでしょうか。

その日まで、先輩のことを思い出したりしながらのんびりと待とうと思う。